夜寝ているときに、パートナーの方から【いびきがうるさい】や【寝ているときに呼吸が止まってる】と言われたことはないでしょうか??
また、【しっかり寝ているはずなのに日中に眠たい】などの症状がある方も、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群には様々な治療法があり、歯科からのアプローチも可能となっています。今回は歯科の立場から睡眠時無呼吸症候群について紹介していきたいと思います。
是非、最後まで読んでいただき、睡眠の質を上げていきましょう。
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睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に一時的に呼吸が停止する状態が繰り返される睡眠障害の一つです。一時的な呼吸停止は通常、数秒から数十秒続くことがあります。この状態により、睡眠の質が低下し、日中の眠気や疲労感、集中力の低下などの症状が引き起こされることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、主に2つの主要なタイプがあります。
1.中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea, CSA):中枢性睡眠時無呼吸症候群は、中枢神経系の異常によって引き起こされるものです。脳が正常に呼吸の指令を出さないため、呼吸が停止することがあります。このタイプの睡眠時無呼吸症候群は比較的まれで、他の基礎疾患(脳幹の障害、心不全など)と関連していることがあります。
2.間欠性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea, OSA):間欠性睡眠時無呼吸症候群は、上気道の一時的な閉塞によって引き起こされるものです。睡眠時にのどの筋肉が緩んで喉が閉じ、空気の通り道が遮られます。これにより、一時的に呼吸が停止することがあります。OSAは最も一般的なタイプの睡眠時無呼吸症候群であり、肥満、大きな扁桃腺やアデノイド、上気道の構造的な異常などがリスク要因として関連しています。
睡眠時無呼吸症候群の症状には、夜間の頻繁な目覚め、口や喉の乾燥、いびき、息切れや窒息感、頭痛、夜間多尿、朝の頭重感や不快感などがあります。これらの症状がある場合は、医師の診断を受けることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群の診断方法
睡眠時無呼吸症候群の診断には、いくつかの方法があります。以下に一般的な診断方法をいくつか説明します。
1.睡眠ポリソムノグラフィ(Polysomnography, PSG):睡眠ポリソムノグラフィは、睡眠中に脳波、心電図、眼球運動、筋肉の活動、酸素飽和度などの様々な生理的パラメータを計測する検査です。患者は通常、夜間に病院や睡眠センターで行います。この検査により、睡眠時無呼吸の頻度や重症度が評価されます。
2.家庭での睡眠モニタリング:病院でのPSGと比較して、より便利な方法として、家庭での睡眠モニタリングがあります。この方法では、患者が自宅で特定の装置(ポータブルモニター)を使用し、睡眠中の呼吸パターンや酸素飽和度などを記録します。医師はこれらのデータを評価し、睡眠時無呼吸の診断と重症度の判断を行います。
3.睡眠時無呼吸のスクリーニングテスト:睡眠時無呼吸のスクリーニングテストは、症状やリスク要因に基づいて、睡眠時無呼吸の可能性を判断するための簡易的なテストです。質問紙や自己報告テストなどが使用され、患者の睡眠障害のリスクを評価します。スクリーニングテストで陽性が出た場合、より詳細な検査(PSGなど)が必要となります。
睡眠時無呼吸症候群の診断は、医師による症状の評価や検査結果の総合的な判断によって行われます。症状やリスク要因がある場合は、医師に相談し、適切な検査と診断を受けるようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群の重症度分類
睡眠時無呼吸症候群の重症度は、AHI(Apnea-Hypopnea Index)という指標に基づいて一般的に分類されます。以下に、一般的な分類基準を示します。
1.軽度(Mild): AHIが5から15未満の範囲にある場合、一般的に軽度の睡眠時無呼吸症候群とされます。
2.中等度(Moderate): AHIが15以上から30未満の範囲にある場合、一般的に中等度の睡眠時無呼吸症候群とされます。
3.重度(Severe): AHIが30以上の範囲にある場合、一般的に重度の睡眠時無呼吸症候群とされます。
※AHI(Apnea-Hypopnea Index):AHIは、睡眠中に起こる無呼吸と低呼吸(一時的な呼吸の減少)の頻度を示す指標です。AHIは1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を計算し、その合計を示します。通常、AHIの値に基づいて睡眠時無呼吸の重症度が分類されます。AHIの値が5未満の場合は正常範囲内とされ、5以上から15未満は軽度、15以上から30未満は中等度、30以上は重度の睡眠時無呼吸症候群とされます。
この分類は一般的なガイドラインであり、医師によって個別の症例に合わせて判断される場合もあります。重症度の判断には、AHIだけでなく、他の要素(酸素飽和度の低下、症状の重篤さなど)も考慮されます。
睡眠時無呼吸症候群の重症度の判断は、治療の選択肢やアプローチに影響を与えることがあります。医師との相談や正確な検査結果の評価を通じて、適切な診断と重症度の判定が行われるようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の重症度によって、治療方法が異なることがあります。以下に、一般的な治療方法の概要を示します。
1.軽度の睡眠時無呼吸症候群の治療:
・ライフスタイルの改善: 体重管理、禁煙、適度な運動など、睡眠時無呼吸症候群のリスク因子を改善することが重要です。
・体位療法: うつ伏せの寝方や特定の枕の使用など、特定の体位での睡眠を促すことが助けになる場合があります。
2.中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の治療:
・持続的陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure, CPAP): CPAPは、睡眠中に上気道を開いた状態で維持するために、マスクを通じて一定の空気圧を供給する治療法です。これにより、無呼吸や低呼吸を防ぎます。CPAPは一般的に重度の睡眠時無呼吸症候群の患者に推奨されます。
・口腔装置: 特定の種類のマウスピースや装置を使用して、上気道の開口を維持することで呼吸の妨げを軽減する方法です。主に軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群の患者に適しています。
重症な場合や上記の治療法が効果的でない場合には、手術的処置や上気道の拡張術などの選択肢が検討されることもあります。しかし、これらの治療法は個々の症例によって異なるため、医師の指示と判断に基づいて適切な治療方法を選択する必要があります。
重要なのは、睡眠時無呼吸症候群の治療は個別化されたアプローチで行われることです。医師との相談を通じて、症状の重症度や患者の個別の要因を考慮しながら、最適な治療プランを作成しましょう。
マウスピースを利用した睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の治療において、マウスピース(Oral Appliance)は一つの治療法として使用されます。マウスピースは、上下の歯の咬み合わせを調整し、上気道の開口を維持することで呼吸の妨げを軽減します。以下に、マウスピースの効果について詳しく説明します。
1.上気道の拡張: マウスピースは、特定の種類のデバイスや装置を使用して、上気道の開口を広げます。これにより、気道の狭窄や閉塞を軽減し、無呼吸や低呼吸の頻度を減少させることができます。
2.いびきの軽減: マウスピースの使用により、いびきの発生や音量を軽減することができます。いびきは上気道の狭窄や振動によって引き起こされるため、マウスピースが上気道を開くことでいびきが改善される場合があります。
3.快適性と携帯性: マウスピースは個々の口腔に合わせて作られるため、フィット感と快適性が高いです。また、コンパクトで持ち運びが容易なため、旅行などでの使用にも便利です。
マウスピースは軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群の治療に効果的であり、特にCPAP(持続的陽圧呼吸療法)が適さない患者に選択肢となります。しかし、重度の症例や中等度以上の睡眠時無呼吸症候群の場合には、CPAPがより効果的な治療法とされます。
重要なのは、マウスピースの効果は個人によって異なることがあるため、適切な診断と適切な装着調整が必要です。マウスピースの使用を検討する場合は、歯科医師や睡眠障害専門医との相談を通じて、最適な治療計画を立てることが重要です。
歯科での睡眠時無呼吸症候群の治療の流れ
1.口腔内診査
ずはお口の中の状態を確認していきます。
・虫歯がないか?
・歯周病は進行していないか?
・歯石はついていないか?
など、睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピースが作れる状態のお口の中かどうかを診査・診断していきます。
※健康保険を使って睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピースを作製する場合は、内科からの紹介状が必要です。
当院より、睡眠時無呼吸症候群の検査が行える内科の紹介も可能ですので、気になる方は遠慮なくスタッフまでお尋ね下さい。
2.治療
お口の中の状態によって治療が必要な歯がある場合は、マウスピースの作製前に治療を行います。
睡眠時無呼吸症候群の程度によっては先にマウスピースの作製を行うケースもありますが、マウスピース作製後に治療を行うと、マウスピースの適合が悪くなる可能性があります。
適合が悪くなってしまった場合は、調整または、再作製が必要となる可能性がります。
3.型どり
お口の中の環境が整ったところで、マウスピース作製の為の型どりを行います。
睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピースは上下一体型のマウスピースなので、上下の歯の型どりが必要となります。
4.お渡し
マウスピースの完成まで約1週間から10日ほど時間を頂いています。
当院では、睡眠時無呼吸症候群の治療用マウスピースを院内で作製しており、マウスピースの世界的ブランドとして有名なエルコデント社の成型機・材料を使用して作製しておりますので安心してご使用していただく事ができます。
完成後は、お口の中で下顎の位置を調整し、上下のマウスピースを固定していきます。
上下が固定出来たら、スタッフよりマウスピースの使用方法や保管方法について説明を行い、まずは、約1週間マウスピースを使用していただきます。
5.調整
実際に1週間使ってもらった後は、その使用感や効果に応じて、下顎の位置を再度調整していきます。
睡眠時無呼吸用のマウスピースの料金
事前に、内科や医科の医院にて睡眠時無呼吸の検査を行い、その医院からの紹介状がある場合、睡眠時無呼吸用のマウスピースは保険診療内で作製が可能です。
3割負担の方の場合、型どりから調整まで約1万円です。
保険適応で作製できる睡眠時無呼吸用のマウスピースは上下のマウスピースを完全に固定するタイプの物で、口の開け閉めが出来ません。
口の開け閉めが出来るタイプのマウスピースは自費診療となり、型どりから調整まで8万円(税込み)となっています。
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